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by mihotodoroki

金子みすゞ 「生きたかんざし」

町家同居人の加藤わこさんの紹介で、数年前から、時々京都ライトハウスで音読ボランティアをさせていただいています。

その一環としてめぐりあった、金子みすゞ の詩。
毎年一度、音読させていただいて、もう3年目になりますが、今年になって、ようやくみすゞさんの世界が少しだけ、感じられるようになってきた気になっています。

やさしく、すべてを受け入れ、それでいて寂寥感のある 詩の数々。
その中でも釘付けになったのが、この詩です。

                「生きたかんざし」

              子守ころころ漁師の子
              もしやもしや髪の毛、これやいいな、
              雀、巣かけよととまつたら、  
              赤いダリヤが燃えてゐて、
              あつつ、あつつと
              飛んで逃げた。

              日ぐれにやしほれたかんざしは、
              髪から抜かれてすてられて、
              濱からかへった母さんに
              髪結てもらふ漁師の子。
              雀は軒に
              巣をかけた。



この詩を読んで、私には、すべてが腑に落ちたような、深い感動がありました。

ディレクターとして、NHKスペシャルで金子みすゞをテーマに番組制作もした、今野勉さんの
「金子みすゞふたたび」(小学館)に掲載されていた詩の解釈を引用します。

   「生きたかんざし」「ダリヤ」とは何か。ダリヤは漁師の子の髪を飾っていた。
   雀がその子の髪の中に巣を作ろうとした。ダリヤは炎となって雀を追い払った。
   本来そこは巣をつくるべきところではないからだ。
   日暮れにダリヤはしおれてしまった。漁師の子はダリヤを捨てた。ダリヤのおかげで
   髪の毛の中に巣を作られなくてすんだ漁師の子は、そんなことは知らず、家に帰って
   母親に髪を結ってもらった。ダリヤに追い払われた雀は、本来巣を作るべき軒先に巣
   を作ることができた。
   誰も、役に立ったダリアのことは知らない、ダリヤは地面に捨てられてしまった。しかし世   の中は、収まるべきところに収まったのだ。

捨てられたダリアは自分であっていいというみすゞの思いが、この詩に込められていると、今野さんはこの後に述べています。

自分は誰にも知られなくても、たとえ思い通りの生き方ができなくても、全体としておさまっているのなら、それで良かったのだ というみすゞの思いに強く心打たれました。


金子みすゞ 「生きたかんざし」_a0063096_1504172.jpg
東京では、毎日の生活と仕事で、詩集をめくるような心の余裕が私にはありませんでした。
自分に足りないことを学ぶために、京都に来ることになっていたのかな。
いつか、心からこの詩のように思えるようになりたいな と思います。
もうちょっと修行が必要かな!?
    
          
          
by mihotodoroki | 2009-01-30 01:42 | つぶやき